山南敬助

4/6
前へ
/26ページ
次へ
「ほんまどすか!?」 がばっと身を起こし、山南に抱きついた。 「ほんまのほんまどすか!?嘘ではおまへんの!?」 「う、嘘じゃないから、明里。落ち着きなさい。苦しい・・」 すんまへん、と明里は一旦離れる。 しかし、すぐにまた顔を近づけた。 明里は、口を小さく開けて、目は大きく見開いている。 いつものしとやかな明里は、どこかに行ってしまったようだと、山南はそう思った。 (そんな顔の明里も可愛いなぁ) と心の中でこっそり惚気ている。 「ほんまのほんまの、ほんまどすか・・・?」 「ああ、本当だよ」 山南がそう言うと、明里の体から力が抜けていった。 くたり、と腰を落とした明里を、慌てて支える。 「大丈夫かい?」 そっと顔を覗き込んだ。 すると、目に涙を浮かべている。 山南はぎょっとして、明里から離れた。 「すまない!そんなに嫌がられるとは思わなかったんだ。いや、あなたが嫌ならば、私は無理に身請けするつもりはないんだよ」 それでも明里は、まだ顔を伏せている。 「いやはや、これは困った・・・」 あなたには笑っていて欲しいんだが、という呟きは、気恥ずかしくて口には出せなかった。 どうしたものやら、と困り果てている山南の袖を、明里がぎゅっと掴んだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加