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誰もいない展望台にひとり、ぽつんと俺は佇んでいた。
今まで見ていたことは、まるで夢のようだった。
世界は、今日終わる。
小惑星が地球へと向かっていることが発表されてから、今日でちょうど一か月。
夜が完全に明けたら、もう終わるそうだ。
一か月前。
死んだはずの人が次々に帰ってきた。何故かは分からない。その中に、みゆきがいた。
みゆきは幼馴染だ。俺の大事な、幼馴染だ。
「哲くん?」
彼女自身もとても驚いていた。
そしてそれからの一か月は、とてもとても幸せだった。
やりたかったこと、行きたかったこと、いろんなことを一緒にした。
とても、幸せだった。
「最期の夢、か」
誰かが言った。
これは地球が見せている最期の夢なのではないか。
もし本当だとしたら、俺はとてもとても幸せな、夢を見たということだ。
もう肉眼で迫ってくる星が見える。
「ああ、なんて幸せだったんだ」
伝えそびれていたことも、伝えられた。
夢でもいい。
それでも幸せだった。
俺はゆっくりと目を閉じる。
ポケットに入れていたスマホには、ずっと消えない表示が出ていた。
一か月前から伝えられていたメッセージ。
<<皆様、良い終末を>>
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