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「再会に……」
穏やかな表情で、タカヤがカクテルに口をつける。隣でジンに用意させたブランデーを煽り、ご機嫌でサリエルもソファに深く身を沈めた。
「ジン、カイン。おまえらも来いよ」
オーナー直々の呼び出しに、カウンターで壁の花に徹していたジンが歩み寄る。少し離れた席で暇つぶしのヘルプをしていたカインも、同様に近づいた。
「紹介しとく。オレの最愛の人、タカヤだ」
いきなり紹介され、しかも内容が内容なだけに顔を赤らめたタカヤに、2人は顔を見合わせた。確かに出会った瞬間から大切にしているとは思っていたが、まさか『恋人』だとは思わなかったのだ。今までに浮いた噂のひとつもなかったサリエルなだけに、余計驚いた。
「ジンです。サリエルさんの仕事上のマネージャーと手伝いをさせていただいています。よろしくお願いします」
丁重に挨拶したのは、『サリエルが紹介した人』だからだ。今後も付き合いが長くなりそうだと判断したジンは、謙遜気味に自分の立場を口にした。
「元医学生で、今は経理を担当させてる」
付け加えられた経歴に、タカヤは小さく頷いて「こちらこそよろしくお願いします」と頭を下げる。
どうやらサリエルが大切にしている人たちに紹介されるらしい。そう判断したタカヤは、嬉しさに顔を綻ばせた。
好き勝手に跳ねる赤茶の髪の小柄な青年が、続いて声をかけた。
「カインです。血は繋がってないけど、弟みたいな感じに考えてくれると嬉しいな」
意味深な挨拶に、タカヤが小首を傾げる。そこへジャックから声が掛かった。
「カイン、サエさんが来たぞ」
「あ、いけね」
慌てて馴染み客の方へ意識を向けたカインの様子に、ピンと来たサリエルがジャックに耳打ちした。聞こえなかった言葉に頷き、カインへ待っていろと合図したジャックが入り口へ向かう。
「2人とも座れば?」
「はい」
大人しく向かいに座ったジンと、客が気になって立ち尽くすカインは対照的だった。
「カイン」
「でも……サエさんが来てる」
ただの客として扱っていないカインの態度に、ジンもくすっと笑みを漏らす。それでサリエルがジャックに耳打ちしていたのだと、ようやく状況が飲み込めた。
「すぐ案内されてくるぜ。ほら」
サリエルが示した通り、ジャックにエスコートされて可愛らしい女性が歩いてくる。途中でカインがエスコート役を代わり、サリエル達のテーブルに落ち着いた。
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