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機械の目を通して周囲を確認する。視界良好、変化なし。上も下も右も左も、見えるのは星空のような景色だけだ。
一瞬気を緩める、が、それではダメだとすぐに気合を入れる。
さっきから相反する考えが頭の中を交錯する。
これは訓練ではない。訓練通りにすれば大丈夫。訓練時のように怠けるな。訓練を思い出せ。忘れろ。思い出せ……
「おい坊主、戦う前から死にそうな顔してるじゃないか」
横のモニターにいかつい顔が映し出されている。作戦行動中の今も平時と変わらずにやけた面構えをしているこのオッサンは、なんとも腹立たしいことに自分の小隊の隊長だ。
「うっさい! 集中が切れるから話しかけるな!」
「へいへい。まあ、どうせセンサーに引っかかればアラーム鳴るし、坊主の目にゃあ衛星と戦艦の違いもわかりゃしないって」
そんな捨て台詞を吐いてようやくモニターから消えた。
訓練ではセンサーは万全ではないから目視も欠かすなと教わっていたが、たしかにジャミングもされておらず大して障害物のないこの空間では、自分の目がセンサーよりも優秀な働きをするとは思えなかった。
癪に触ったものの、少し目を閉じて緊張をほぐした。
あ~死にたくない。なんでこんな戦争真っ只中なのに入隊しちゃったんだろう……
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