新米兵士は死にたくない

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「おい坊主、気を抜きすぎだ! くるぞ!」  小隊長の声が響いたすぐ後に、アラームが鳴り響いた。  反応のあった方を確認する。モニターを数段階拡大してようやく小さな点が動いていることが確認できた。  ほぼ間違いなく敵。それもたった一機、今はまだ小さな点にしか見えないが、センサーの情報によると猛然とこちらへ向かってきているらしい。  今回のミッションはこのルートを通る敵勢力へ不意打ち強襲をかけ撃破、もしくは時間稼ぎである。このルートの先には今まさに撤退準備中の要所がある。その撤退が完了するまでの時間稼ぎが最重要目標だった。  しかし、一機で攻めてきたということはつまり…… 「くそ、よりによってエースかよ! おっさ、小隊長どうしますか!?」 「そうだな……敵進行ルートは機雷でのみの対処とし、両サイドから射程ギリギリの距離で牽制射撃。向かってきたら決して近付かずに距離を保て。いいか、ルート上に立たず、決して敵機に近付くな!」 「な!?」  他の隊員たちは指示に従いすぐに散開した。  どういうことだ? 今回の任務は時間稼ぎが第一目標のはず。エース機に対しては機雷なんて足止めにもならないだろうに、それでも防衛地点への直線ルートには立つな? 「ボーっとしてんじゃねぇ! お前は俺の横だろ!」  一喝されて反射的に移動する。この小隊では戦闘中は二、三人の班で行動するよう決められている。今回の作戦では俺は小隊長との二人編成の班だ。 「どういうことですか小隊長! 何故、防衛すべきルートを放置するのですか!」 「あ? そんなもん、エース機とまともにやりあわないためだ!」  迷いのないその言葉に俺は逆に言葉を失った。はっきり言いやがったよこのオッサン!  奥歯を噛みしめる。やっぱり噂は本当なのか……  腰抜け隊長、撤退長、負け戦製造機等々。  そんないくつもの汚名を持っている人が小隊長を務める部隊へ俺は配属された。
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