新米兵士は死にたくない

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 エースに成れないと知ったあとも努力を続けていた。たとえエースになれなくとも、自分ならきっとエースに負けない活躍ができる。むしろエースでもないのに誰にも負けないパイロットの方が恰好良い。  そう思って、思いこみ続けて努力した。  元々機械の操作は得意だったし、射撃やその他の武器の扱いも指導通りに再現することはなんの問題もなくクリアできた。  この時はまだ、同期の一般兵内では優秀な方だった。  ただそれは、決してエースにはなれない一般兵の中での話だ。  同時期に入隊したエースの訓練を覗く機会があった。  目で追うことすら困難なその動きを見て、自分が対峙している訳でもないのに膝が震えていた。  その数日後から始まった実戦を模した訓練から、俺の優秀さは見る影もないほどに崩れ落ちた。  とにかく怖かったんだ。兵器に乗って行う命のやりとりが、コックピットを撃ち抜くビーム兵器が、頑強な身体を切り裂く巨大な刃が、何よりもそれを行う自分と同じはずのパイロットが……  もちろん模擬戦では実弾は使わない。撃たれればマーカーが付き、切れない刃で叩き、型落ちしてる動きの鈍い機体で戦いごっこをするだけだ。  それはわかっているのに、あのエース機のように動き、撃たれ、切られるのではないかと想像してしまう。相手に全く近付くことができずに、ただ逃げ回るしかできなかった。  訓練後にはボロボロに汚れた仲間の機体と一緒に、同じ訓練をつんだはずなのに綺麗なままの自分の機体が並ぶ。  初期訓練の期間が終わり各部隊への配属先が発表された時、諦めと納得の入り混じる想いで小隊長の名前を見つめていた。  軍へ入隊した当初、絶対にこの人の下にはつきたくないと思った人だった。
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