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バブルが弾けて、私の生活も少しずつ変わった。 勤めている会社でもリストラの嵐が吹き荒れ始めているのに、私は仕事が終わると、芝浦のディスコのお立ち台の上に立ち続けて、毎日踊り狂っている。 末期症状における狂乱。 全ては、 何もかも終わっていくのに 最後の狂い咲きのような熱狂。 毎夜、その狂った熱に酔いしれる。 それでもそれは、 魔法のように、 甘い熱狂だった。 迫り来る圧倒的な崩壊と終焉を迎える悲しみを、全て弾き飛ばす狂い咲きの魔法。 ストリッパーでもないのに、自ら進んで露出の多いボディーコンシャスな衣裳を着て、食い入るように見つめる大勢の男たちの視線を浴び続けた。 でもその男たちの中に、いつもアルマーニのスーツを着こなし、VIPルームを利用してはいるが、虚ろな目をしたあの人がいた。 お立ち台にいる私には気がついていたはずだけど、 あの人は一度も私の方を見ることもなく、声を掛けることもなく、いつの間にか消えてしまった。 いつの日か、私はお立ち台の上から、いつもあの人を探していた。 末期症状の狂い咲きを あの人と共に熱狂したかった。 さよならも言えずに 別れ別れになってしまった 二人の儀式にしたかったのに… いつの間にか、末期症状の狂い咲きの宴は終わり ディスコからはお立ち台が撤去され やがてディスコそのものも消滅した。 その跡地は、元の無表情な倉庫に変わっていた。 また さようならも言えなかった。 そして 全てはもう終わり。
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