「終わりにしよう。」

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「終わりにしよう。」

初めて口に出したその言葉は、想像していたよりはるかに痛かった。 「別れようと思う。」 楽しいはずのランチで、いきなり重い話を振られた友人は思わずぐっ、と食べ物をつまらせた。 「…は?彼氏と?」 「うん、そう。」 表向きは平然と。 ここで泣くなんて情けない。 「また何で… 大学離れて遠恋してたけど、上手くいってたじゃん」 上手くいってるように見えてたんだ。 よかった、と胸を撫で下ろした自分がいた。 「表向きはね…」 実際は酷いものだった。 主に自分が。 定期的に襲ってくる寂しさに耐えきれなくなって、彼氏である大樹に泣きながら電話をする。 「帰ってきて」 「次が〇ヶ月後なんて遠いよ」 「会いたい、今すぐ帰ってきてよ」 最初のうちは、可愛いで済ませることができたが、段々とエスカレートしていった。 電話の頻度は高くなり、内容も一方的に駄々をこねるだけ。 まるで発作だ。 そんなことをしている自分は、 彼女として、とても面倒くさいと分かっている。 そう分かっていて、それでも発作を止められない自分をどんどん嫌いになっていった。 そして自分が嫌いになると、 好かれている自信もなくなる。 こんな自分、まだ好きでいてくれる? 怒らないってことは、まだ好きだってこと? 何でこんな私と付き合い続けてるの? 自分の選択で大学が離れてしまった罪悪感があるのか、暴走していく自分を一切責めない大樹にもイライラして、どんどん何かが外れていった。 そしてある日気づいた。
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