夢をお仕舞い

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夢をお仕舞い

 仕事終わり、ふらふらとワンルームへ帰宅。座り込んで、彼氏からの「お疲れ様」メールに返信。3年も付き合っているから赤子の手を捻るように簡単に優しく。  "結婚"言わせたいような、言われたいような。とろ火のような願望。もっと強火じゃないと彼も煮え切らない。  食べて眠ってしまう前にお風呂。  爪突く。ガラスの箱。お母さんからもらった…。 「どう?可愛いでしょ」  きらきらとクリスタル装飾な手のひらサイズ。ころんとしていて、今見ると安っぽい。 「この中に、仕舞っておくのよ」  開くと光が溢れ出す。実家の玄関と同じ匂い。深紅のクッションに控え目なリングはプラスチック。指輪って、憧れだった。 「そしたら思い出せるでしょ?」  お母さんのしたり顔が見えるよう。ちょっと違うよって笑ってしまう。でも大切な約束。  彼に再度返信「今度の休日、部屋を探そう」  仕舞っていたものを、一歩ずつ始めていこうかな。
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