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朝日
夜の風が、私のワンピースの裾を僅かに揺らす。田舎に位置するであろうこの場所は、夜になれば出歩く人の気配はなくなっていく。
静かなその場所で。
その橋の上で、私はただ立ち止まっていた。
川のせせらぎだけが、耳に届く。
河川敷の上に建つこの橋は幼い頃からずっと通り続けていた場所。朝日も夕日も綺麗なこの場所は、私達二人の思い出が沢山詰まってる。
それなのに、今は暗くて。
寂しくて、会いたくて。信じられない。
手すりに手を置く。縋る思いだった。
途端に身を乗り出せば上半身は傾いていく。
このまま、落ちてしまえたら。
私のこの想いは叶うのだろうか。叶うのならばどうか、今日の出来事が全部。
嘘だったらいいのに。
流れる川の音が、私を誘う。その音に身を委ねようとした瞬間。
「ユリ」
優しい温もりに、涙が一筋、頬を伝って落ちていった。
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