7話

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「姫から私に口づけをしてくれるなど、なんと嬉しいことか」 スヤスヤと寝息を立てる俺を優しく抱きしめたまま、天王寺の思考回路はどんどん暴走していく。 「ならば、撮影機器を撤収などさせなければよかったのではないか」 俺からのキスを映像に残しておきたかったと、天王寺は若干の後悔を含ませた表情見せ、次にもっと明るい表情をつくった。 「このまま姫を起こさずに教会に連れ、そこで誓いの口づけをさせるもの悪くはない」 小さく小さくぼやきだす天王寺の言葉は、俺の耳にはもう届いていなかったが、それは知らなくて良かったと心底思える台詞ばかりであった。 「されど、起こさずにドレスを着せるにはどうしたらよいのだ」 「それよりも、指輪の用意が間にあわぬな」 「絶好の機会を逃すわけにはいかぬであろう」 あれやこれやと危ない思考を働かせる天王寺だったが、規則正しく繰り返される姫木の寝息と体温に、いつの間にか侵食されて瞼を閉じてしまっていた。 膨らんだ妄想を夢に、目が覚めても嬉しいことが待っている。天王寺の寝顔はとても幸せでいっぱいだった。
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