371人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「隣座ってもいい?」
講義の始まる前、俺は見ず知らずの生徒にいきなり声を掛けられた。別に断る理由もないので、俺はどうぞと声を返したんだが、そいつはなぜかぴったりと俺の隣に座った。
「あ、あの。ちょっと近いんだけど……」
「あっ、ごめんね。今日初めて学校へ来たばっかりだから、まだ何も用意できてなくて、良かったら教材とか見せてくれないかな?」
「今日から?」
「留学先から編入してきて、今日からここへ通うことになったんだ」
編入してきたのか、俺は教材がまだないと言った生徒に、仕方なく半分見せてあげることにした。
つまり、今日初めて学校に顔を見せたってことは、俺のこと知らない。だから声かけてきたのか、なんとなく誰かに声を掛けてもらえたことが、すごく嬉しいと思ってしまった。
俺ってめっちゃ孤独だったんだな……。
「ありがとう」
そいつはにこっりと笑って、感謝を述べるとノートを机に広げた。
「留学ってどこ行ってたの?」
「アメリカだよ。そうだ、自己紹介してないね。はじめまして、西園寺雅臣です」
「はじめまして、俺は姫木陸」
互いは小声で自己紹介を済ませた。天王寺に負けず劣らず綺麗な顔をした、肌の少し黒い西園寺は、長い指をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!