4話

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拘束具が外されようやく自由になった天王寺は、その勢いのまま尚希を掴み上げていた。 「尚ちゃん、落ち着いて、落ち着いて」 「落ち着いてなどいられるか」 「ギブ、ギブ。姫ちゃんの居場所教えてあげるから、離して」 ギュウギュウと締め上げられる首元の手を離してもらうため、尚希は素直に居場所を教えると言った。それを聞き天王寺はすぐさまその手を離す。 「どこにいるのだっ」 「この下だよ」 人差し指を立てて、尚希は真下を指し示す。それはこの部屋の真下の部屋にいると教えていた。 天王寺はバスローブを身に纏うと、そのまま部屋をものすごい速さで出て行く。 下の階とはいえ、スイートルーム的な高価な部屋はそれぞれ専用のエレベーターがあるため、一度1階まで下りてその部屋に繋がるエレベーターに乗り換える必要があるため、天王寺はイライラとしながら1階まで下降した。 隣の部屋にいた桜井など見向きもせず。 「もう、尚ちゃんてば本気で姫ちゃん好きすぎなんだからぁ」 姫木のことになると周りが見えなくなるんじゃないかと、尚希は嬉しいため息をつきながら、部屋を出て行った天王寺の後姿を眺めた。 それから一息ついた尚希は、部屋のあったカメラの電源を切ると冷ややかな視線を向けた。 「部品一つ残さないよ」 カメラに触れ、尚希は機材は跡形もなく消し去ると決め部屋をでた。天王寺の後を追うようために。 「尚希様、この者はいかがいたしましょうか?」 寝室を出てきた尚希に、スーツの男が捕らえた桜井をどうするかと尋ねてきた。口を塞がれ言葉がでない桜井に、尚希は零度の表情を向けた。それは普段の優しい顔とはまるで別人だった。 「重りをつけて海に沈めようか……」 「んん──ッ」 「ただで済むと思うなよ」 いつものふんわりとした口調ではなく、低く重厚感のある声が響く。鋭く光らせた瞳と怒りに満ちた表情を見せた尚希は、スーツの男たちにそこらへんに頑丈に縛り付けておけと命じると、静かに部屋を後にし天王寺の後を追った。 桜井の処分は後で存分に懲らしめてやると決めて。
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