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監督としばらく話をした後、缶コーヒーを飲みながら、1人トレーラーハウスに戻った。
中に入ると、1人の男性がパソコンのモニターと睨めっこをしていた。
私はゆっくりと近づきながら、その男の人に後ろから優しく抱きついた。
「もう新作を書いてるの?」
「当たり前だろ。君がこの役で満足しないようにな」
そう言うと、亭主は私の顔を見ずに、手だけを握った。
私は女優で夫は脚本家。
今、撮影中の映画の脚本も旦那が書いた。
だけど勘違いしないで欲しい。
決して、この役はコネで取ったのでは無いと。
私もオーディションに参加して、実力で“女殺人者美織”の役を勝ち取った。
でも最近の夫は薄っぺらい恋物語ばかり書いていた。
しかも前に発表した作品や、その前に発表した作品はどれも不発に終わり、ここで違う作品を書かなきゃ、この業界から閉め出されてしまうのは目に見えていた。
そこで夫は1人の女殺人者の話を書いた。
ストーリーは申し分のないのだけど、タイトルがどうしても気に入らず、私は何度も変更を求めた。
「ねぇ、このタイトルやめにしない」
「気に入ってるから無理」
案の定、夫は頑なに首を縦に振らなかった。
そこで私はさっき、手に入った新兵器を出すことにした。
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