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「マコちゃんがね、今日のシーンをスマホで撮ったんだけどこれが中々良いのよ。監督にも見せたら、この映画のポスターにしようって。マコちゃん喜んでたわ」
私は早速、マコちゃんが撮った画像を夫に見せた。
それは高くそびえ立つ地元の名所の山へと沈んでいく美しい夕日を背景に、これから大罪を犯す美織と、そんな彼女の企みなど何にも知らずに抱きしめるゲス男大亮との抱擁シーンだ。
夫は画像を見ながらしばらくの間、考え込んでしまった。
だが最後には
「………悪くない」
と眉を上げて、言ってくれた。
「でしょう。このポスターにこのタイトルを使ったら、単なるB級映画になっちゃうわ」
私は本音を夫にぶつけた。
今まで、夫の心を傷つけないようにやんわりと言ってきたが、ここは強めにいくしかないと考えた。
「確かに、このポスターに『おとこ殺し』はな………」
そう言いながら、夫は苦笑いを浮かべた。
それは夫の敗北宣言に等しかった。
「あなたなら、良いタイトルを思い浮かぶわ。頑張って」
私は夫を鼓舞しようと、頬にキスをした。
「ああ、頑張るよ」
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