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【シーン1】雨の中
……雨。雨が降っている。
地面を跳ね返るほどの強い雨が墓地を覆っていた。
墓地は故人の寝所ふさわしく眠りについたように静まり返っている。
耳に届くのは雨音だけ。
いったい、いつまで降るんだろう。
墓地の一角に人影が見える。
若い女性が1人立っていた。他に人影はない。
つい最近名前が刻まれた墓碑の前で、彼女は立ち尽していた。
この雨の中、傘もささずに。数時間前からずっと。
いつだったか、だれかに教えてもらった言葉がある。
明けない夜はない。止まない雨はない、と。
俺もそう信じていた頃があった。
しかし、その人の時間がそこで止まってしまったら――。
その人にとって、そこは永遠なんじゃないだろうか。
そうだとしたら、明けない夜も、止まない雨も、在る。
この雨は本当に止むんだろうか。
俺は、雨に打たれる彼女の背中を、ただ見ていることしか出来ない――。
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