君がいる幸せを…

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君がいる幸せを…

ニーチェは言った。 人間は行動を約束することはできるが、感情は約束できない。なぜなら、感情は気まぐれだからである。 全くもってその通りだ。俺はそんなことを考えながら、手に持っていたゲームのコントローラーをソファの上に置いた。 そのすぐ隣では、スマホが今日、何回目かの彼女からの着信を知らせている。 「マジでごめん。寝坊した」 彼女からの問いかけに俺は素っ気なく言葉を紡ぐ。 「そっか。連絡取れないから、事故にでもあったのかと思って心配してたんだ。家にいるなら良かった」 心の底から安心したと言うように、彼女が小さく息を吐いた。 それは、ここ最近の俺がついつい口から零してしまう悪意のあるそれとは似ても似つかないものだった。 何時間待たせるのよ。寝坊するなんて信じられない。そう言って怒ってくれたならどんなに良いだろう。 そんな態度をされたら謝ることすらできなくなる。
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