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「見て! 四ツ葉のクローバー!」
高らかに叫んだ星奈が手に持っている緑色の四つの丸を見て清花たち一年四組の六人の目が輝いた。
「うわっ、すごーい! 本当に四ツ葉のクローバーだ!」と理香が四ツ葉を数えるようにまじまじと見た。
「っていうか星奈、先からがさがさ何やってんのって思ったら四ツ葉のクローバー探してたの?」
クラスメートで学級委員でもある佐賀かんなが聞いた。
「でもこの芝生、人工芝じゃなくて本当の芝だもんね」
かんなの隣に座る羽橋瑠衣の言葉に清花は芝を撫でた。朝ヶ谷高校の中庭の芝生は公園のような草原で若草色、淡萌黄色、浅緑色、緑色、千歳緑色といった沢山の緑色が輝き、その上に沢山の蒲公英や白詰草が生えている。
「探せばまた見つかるかな?」としほりもクローバーも探し始めた。その横で清花は理香を介添人に、瑠衣、かんなの質問に答えていた。
「え、源川さんって中学の時から着物着てんの!? しかも自分で!?」
かんなが絶句した。
「家から帰ったらすぐに着物に着替えていますわ。木綿やポリエステルで出来たものなら家でお洗濯ができますから手軽で重宝していますの」
「でも着替える? のに時間かからない?」
今度は瑠衣が質問した。
「帯の結び方次第ですけど一重太鼓結びでしたら今は二十分ほどで着付け終わりますわ。浴衣だとそれこそ十分で着替え終わりますわね」
清花の言葉にかんなと瑠衣と理香が「はー……」と感嘆のため息を吐き出した。
「理香、源川さんって凄すぎない?」
かんなが理香に耳打ちした。
「あたしはそれを中学の三年間で千回ぐらい思ったよ」
それを聞いた清花は悪戯っ子のように目を瞬かせた。
「まぁ、嫌ですわ。私、何か大それたことをしました?」
「あたしに言わせれば着物を着た花はいつも大それたことしてるよ。歩いていて着物の清に抜かされた時は本当に吃驚したからね?」
「え、すごっ」
「慣れの問題ですわ。皆さんも習えばすぐに出来るようになりますわ」
「いや、無理無理無理」
三人の口から同じ言葉、同じ反応が返ってきた。
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