Selfish moonlight

2/13
前へ
/13ページ
次へ
 俺たちは駆け足で敷地内を出た。そして腕時計を確認する。午前四時。シュミレーション通りだ。 「なんだか、夢見たい」 「笑うなよ」 「だって、本当にそうだから」  通りに出ると俺たちは手を繋いだ。 「寒くないか?」 「平気」  月乃は微笑んだ。 「まずは電車に乗って都心に向かおう」 「うん」 「ごめんな、これから苦労をかけるけど」 「ううん。大河くんがいればそれだけで幸せ。二人で過ごせるならそれだけで」  どこかで聞いたことある台詞に俺は思わず笑った。  月が私達を追いかけてくるみたい、と彼女は呟いた。月乃は子供っぽく、夢見がちな所がある。口調やさっきのような考え方がいい例だ。  歳は二十歳、幼稚園からお嬢様学校に通っていて実家は生粋のお金持ち。対して俺は二つ歳上のフリーター。誰がみても釣り合わない二人。 「ねぇ。出会い、覚えてる?」  近所に聞こえないように月乃は囁く。 「勿論。空港の清掃員の俺と海外帰りの月乃」 「じゃなくて、日付」 「日付? えっと、いや……」 「もう、サイテー」  やや甘えた声でそっぽを向いた。俺はそんな彼女にキスをした。 「嘘。三年前の今日、だろ」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加