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俺たちは駆け足で敷地内を出た。そして腕時計を確認する。午前四時。シュミレーション通りだ。
「なんだか、夢見たい」
「笑うなよ」
「だって、本当にそうだから」
通りに出ると俺たちは手を繋いだ。
「寒くないか?」
「平気」
月乃は微笑んだ。
「まずは電車に乗って都心に向かおう」
「うん」
「ごめんな、これから苦労をかけるけど」
「ううん。大河くんがいればそれだけで幸せ。二人で過ごせるならそれだけで」
どこかで聞いたことある台詞に俺は思わず笑った。
月が私達を追いかけてくるみたい、と彼女は呟いた。月乃は子供っぽく、夢見がちな所がある。口調やさっきのような考え方がいい例だ。
歳は二十歳、幼稚園からお嬢様学校に通っていて実家は生粋のお金持ち。対して俺は二つ歳上のフリーター。誰がみても釣り合わない二人。
「ねぇ。出会い、覚えてる?」
近所に聞こえないように月乃は囁く。
「勿論。空港の清掃員の俺と海外帰りの月乃」
「じゃなくて、日付」
「日付? えっと、いや……」
「もう、サイテー」
やや甘えた声でそっぽを向いた。俺はそんな彼女にキスをした。
「嘘。三年前の今日、だろ」
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