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それにしてもこの逃亡は上手くいくのだろうか。これからの事を思うと不安がよぎる。
彼女の両親は俺と付き合っているのを反対している。無理もない、俺が同じ立場だったら反対しているかもしれない。
俺は月乃を見た。電灯に照らされる長い黒髪は艶々と輝きを放っている。
月乃を苦労だらけの人生にさせるのでは。……いや、俺が夢を叶えて楽をさせてやる。なんなら、夢を諦めてどこか安定した職に就いてもいい。
駅が見えてきた。時計を見るともうすぐ始発がやって来る時間だ。
「急ごう」
俺は走った。当然、月乃も追いかけてくると思った。
「月乃?」
足音が一人分しか聞こえない。俺は振り返った。
しゃがみ込んでいる月乃が居た。
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