Selfish moonlight

4/13
前へ
/13ページ
次へ
 それにしてもこの逃亡は上手くいくのだろうか。これからの事を思うと不安がよぎる。  彼女の両親は俺と付き合っているのを反対している。無理もない、俺が同じ立場だったら反対しているかもしれない。  俺は月乃を見た。電灯に照らされる長い黒髪は艶々と輝きを放っている。  月乃を苦労だらけの人生にさせるのでは。……いや、俺が夢を叶えて楽をさせてやる。なんなら、夢を諦めてどこか安定した職に就いてもいい。  駅が見えてきた。時計を見るともうすぐ始発がやって来る時間だ。 「急ごう」  俺は走った。当然、月乃も追いかけてくると思った。 「月乃?」  足音が一人分しか聞こえない。俺は振り返った。  しゃがみ込んでいる月乃が居た。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加