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ノックをするとお母さんが顔を出した。
「すみません、月乃さんの具合はどうですか」
「今起きた所」
そしてちらりと後ろを振り返った。そこに彼女が寝ているのだろう。
「いいわ。入って」
俺は月乃の部屋に入った。豪華な壁紙、重厚な家具。天蓋付きのベッドに彼女は居た。
「調子はどうだ」
月乃は平気、と言って少し黙った。沈黙が訪れ時計の針が聞こえ始めた頃、彼女は形の良い唇を開いた。
「手紙、読んだ?」
「本当か、あの内容は」
コクリ、と頷いた。
「どうして、騙してたのか。俺は、人生全部捨てようとしたのに。月乃は初めから帰るつもりだったってことか」
「ごめんなさい、大河くん」
「なんとか言ってくれよ」
「ごめんなさい」
「なあ」
「ごめんなさい」
それから月乃はごめんなさいとしか言わなかった。
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