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突然体の中の空気が逆流したように感じた。とっさに、動けないはずの両手が耳をふさごうと反応した。耳の鼓膜が破れんばかりに激しく大きく震えた……。どこか聞き覚えのある破壊音。砂ぼこりが舞い上がり、独房の壁と同じ石板が原形をとどめない破片と化して、転がりこんだ。
咲は思わず叫んでいた。
見覚えのある緑色の煙が漂っているのが見えた。咲の声に反応したように女の子の明るい声が響いてきた。
「あ! サキちゃーん!」
リ、リテラ……?
「リテラ?」
咲は大声を出してみた。破壊音はまだ続いている。もう一度負けないように呼んでいた。
「そうだよ! リテラだよ! 今行くね!」
声はもう近いところにきていた。多くの時間をおくことなく、リテラは咲の独房を見つけ出した。咲の顔を見て、にこっと顔を緩ませた。
「よかった! やっぱりここにいたんだね」
「リテラ!」
リテラの笑顔を見て、咲もほっと安堵の息をついた。思わず涙が出そうになったけれど、だめだめ、私はリテラよりお姉さんなのだ。
「それにしてもここって、こんなに薄暗くてほこりっぽいところだったんだね。うー……目が痛いなぁ」
依然ほこりが舞っている。
「ここ、一体どこなの?」
「警察所の地下監獄だよ。まあ……囚人を閉じこめておくところなの。それよりサキちゃん、早く出してあげるね」
咲が「ありがとう」と言い終える前にリテラは「独房の一番後ろまで離れてて」と忠告した。言われるがままに独房を後ろに下がった。冷たい壁に背中がついた。リテラの顔が闇に紛れて見えなくなる。
「背中までつけた? ……じゃあ、いくよ」
次の瞬間、激しい破壊音が独房中に響き渡った。小刻みに壁と床が震えた。細かい石のかけらが宙に飛び散り、咲の足元近くまで転がってきた。
鉄のカランカランと落ちる音がした。
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