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咲はクッキーを食べる音で、他の音は聞こえていなかった。しかし、リテラは自分が来た方の反対側からバタバタという足音を聞いていたようだ。
足音がこちらに向かってくる。
「サキちゃん、こっち!」
真剣な顔つきになったリテラは、咲の右腕を掴んだ。そして引っ張りながら走り出した。
クッキーを全部飲みこんで、ようやく異変に気がついた。足音は近づいてくる!
「追っかけてきてるよ!」
「派手に音をたてたからなあ」
走るにつれて、大きさがバラバラの石が転がっている。階段を見つけ、それで地上に出るようだが、それまでの道は崩壊している。
「……ごめん。足場すごく悪いね」
責任を感じてリテラが先に登り始めた。後から登る咲を手助けしようとする。
「私はこういうところ歩くの、慣れてるんだけどね」
一歩踏みこむと硬いはずの石は砂のように崩れた。地上に上がるまでに何度も足をすくわれかけた。これがリテラの破壊魔法か。塊に見えても、実際は粉々だった。
「これじゃ、あの人たちも登ってこれないんじゃない?」
階段を駆け上がり、やっとのことで建物の中へ脱出した。重々しい雰囲気。おそらくここが警察所だ。
「……リテラ?」
階段から咲は遠く離れたが、リテラは階段から離れようとしない。階段の下を見て、両手を伸ばしている。
ドンッと破壊音がした。音とともに階段はさらに粉々に崩れた。
「じゃあ、ここから出よっか」
ゆっくりとした足取りで、リテラは砕石の山から離れていく。
「そ……そうだね」
階段の下から「おい、なんだこれは!」「さっきの大きな音はこれだったのか」と声がする。「早く道を作れ、作れ!」と叫んでいる。来るまでに時間はかかりそうだ。
「サキちゃん、こっちだよ。ここから町の西側に出るから、後ろからついてきてね」
「う、うん」
リテラに腕を引っ張られて建物の中を走りまわった。警察所の中は咲にはさっぱりわからない。リテラは前を見て、咲は追いかけが来ないか周囲を見渡した。なぜかリテラは出口への道を知っているらしく、迷わずに走り続けていた。まさか、来たことがある……?
「あっ出口!」
ようやく出口が見えてきた。外は太陽の光に照らされている。いつもみる町の風景が広がるだろう……。
「……え?」
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