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二人の目の前で、黒髪に白の羽を飾った男たちが何人もの町人を紐で縛り上げ、動くことも許されなく座らされている。一人は手に短剣のような鋭く輝いている刃物を持ち、その人たちの目の前で突きつける。もう一人は民家の中から仲間のもとに走り寄ってきた。二人で一組となり強盗しているらしい。町人は悲鳴を力の限り張り上げながら助けを求めていた……。それも一箇所だけではなかった。あちらこちらから悲鳴が聞こえた。
「いつのまにこんなことに……」
リテラの口から、二度も同じ言葉がもれた。まばたきもせず、呆然と立ち尽くしていた。
「さっきまで、この辺りに来てなかったんだよ? てっきり、北のほうに住む人たちが食い止めたのかと思ってた」
中には道端で倒れている人もいる。かろうじて息はあるが、体に傷を負っているようだ。それも一人だけではない。道の石畳みは所々赤く染まっていた。
「町が……」
建物にも目を向けた。人間同士の戦いのせいで家の一部は資材をむき出しにされていた。家の中に異民族が入り、家にいた者は、形相を変えて逃げ出した。あとに続いて他の異民族が入っていく。家の中のものを強奪しようというのだ。
「なんて悲惨なことに……」
「……そうだった」
咲はリテラの父親の言葉を思い出した。
「リテラ、リテラは早くお家に帰って。ここにいたら……」
壊した、と疑われる。それは言わなかった。
「どうして?」
「リテラのお父さんに、二人を守るように頼まれたの」
リテラは何も言わず、隣に立つ咲の目をじっと見つめているだけだ。
「リテラが疑われるかもしれないからだよ」
「でも……じっとしてなんていられないよ」
二人は目の前に広がる光景をもう一度見つめた。
「家を直していないってことは、それだけ材料がないってことか魔力がたりないってことだよ。もしかしたら……もう使い過ぎちゃったのかもしれない」
異民族は何かを言いながら住人たちに襲いかかっている。咲にはさっぱり理解できない。
ちょうどその時だった。
すぐ後ろで、知らない言語が聞こえた。何を言っているのかわからないが、怒っているような声だ。
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