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着物を着た店員に座敷に通されると、妹の友香と老若男女が十五人程集まっていた。子供とご夫妻、学生からお年寄りまで何となく見覚えのある顔が並んでいる。
紗織は上座の席に座らされ、何事かと思ってこそこそと隣の妹に聞く。
「なんなのよ。田舎の同級会とか言ってなかった?」
「似たようなもんじゃない。お姉ちゃん、そう言わないと来てくれないから」
「私たちも、今日初めて会う方ばかりなんですよ」
「そうなんですか?」
「もしかして、わからないのね?」
「紗織さん。みんな、貴方に感謝して今日集まったんですよ」
「もちろん、私たちの奢りですから。お好きな物を好きなだけ食べてください」
「えーと、よくわからないけど、ありがとうございます」
「疲れてるんじゃないの?」
「あのときより、やつれたみたい」
「老けたんだ?」
子供がそう言って、隣の母親が口を塞いで苦笑いしている。紗織は口々に自分のことを話す顔ぶれを眺めまわしてやっと気付いた。
「お姉ちゃん。凄いじゃない。みんな、お姉ちゃんに命を助けられたって、喜んでんだよ」
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