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「お姉ちゃん。プロポーズされてるでしょ?今回、SNSや地方紙を利用して雨女の功績を呼びかけてくれたのは神野さんなんだよ」
妹にそう言われて、紗織は食べ物を喉に詰まらせて咳き込んだ。正直、その人物は苦手だった。そもそも紗織が雨女となってしまった因縁の男の子である。
「もう、27歳なんだからさ。結婚してあげなよ」
「まさか、来てるんじゃないよね?」
紗織は神野洋介が店の奥から花束を持って出て来るんではないかと警戒した。中腰になって、逃げる態勢を取り両隣から押さえ付けられる。
「来てません〜」
「ふー、驚かせないでよ」
紗織は少し安心して、お酒と料理に手を伸ばした。こんな人に囲まれて、美味しい食事をするなんて久しぶりのことである。
「アイツのことはともかく、なんか少し楽しくなってきた。正直、この数年間ひとりぼっちで生きてたからなー」
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