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プロローグ
おれの名は青井(あおい)良夫(よしお)、JRに十九年、勤務している四十一歳の中年男だ。
まあ、はっきり言って厄年、去年もいいことなかったが、今年も幸運は望めない。
現在の勤務先は山手線の電車の車掌で、なかなかハードな日々を送っている。
なんせ自慢じゃないが、山手線は仕事内容が厳しいことで全国でも知られる有名な路線で、これを毎朝こなすのは並大抵の苦労じゃない。駅員は通勤時間の電車に乗り込む乗客の背中を押すおかげで、ほぼ例外なく椎間板(ついかんばん)ヘルニアになり、腰痛に悩まされることになる。
おれの場合、腰骨から三番目の背骨が飛び出し気味らしい。休憩時間に柔軟体操するのだが、痛むので永年の間、ほったらかしにした背骨は数センチも曲がらない。
そんな、おれだが幼い頃は美少女に間違われるほどの美少年だった。
おかげで渾名(あだな)は「マカオ」という地名をもらい、思春期には悩みに悩んだ。あまりにも女っぽい顔だちでモテなかったのだ。どうやら同じ種族と間違われ、恋愛対象に見てもらえなかったらしい。
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