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いつもと変わらない毎日を過ごしている。定年退職をし、現在二人で年金を貰い生活をしている。朝は五時に起き、マンションの周りの大きな公園を散歩する。何を話すことも無く、ぼんやりと二人で並んで歩く。
彼女は一つ年下で、所謂お見合いと言う我々の時代には、よくある出会いから始まった。
歳を追うごとに、呼び方が変化していった。
名前で呼んでいた二十歳そこそこの頃、子供が出来て母さんと呼び、子供が家を出てからはお前、孫の前では婆さん。
私も今では、貴方と呼ばれるように変わっている。
散歩を終え、朝食を食べる。
私は一度だって朝食を作ったことは無い。今更作る事も無いのだろうと思う。今何か作れと言われても、握り飯が関の山である。
つまみに缶詰を開けるだけだ。
いつも通りの慣れた味噌汁に箸を浸し、米を食べる。子供用の茶碗が今の我々には丁度良く、昔息子や娘が使っていた蛙のキャラクターがウインクしている茶碗に米が乗っている。魚や切干大根を無言で食べる。
出会った頃は、照れてばかりで、何とか会話が途切れない様にと話をし続けていた。子供が産まれると騒がしく、子供が出て行くと会話も減った。
それでいい。そんな風に彼女も考えているのだろうと思っていた。
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