夫婦

3/11
前へ
/11ページ
次へ
 雨の音が心地よい。  さらさらと降る雨音を聞きながら夢に入る。夢の中の私は若く、隣の妻も婆さんでは無い。美しいと見惚れたあの頃の彼女。  彼女はいつも、一歩後ろをついて着た。  私を立てる出来た妻だった。いや、優しい妻だ。  夢の中の我々は手を繋いでいる。少し恥ずかしそうに俯く彼女を引っ張るように歩いている夢。  ああ、いつから手を繋いでいないのだろうか。  心地よい温かさの中、今夜も彼女は息を潜め、部屋を出て行った。トイレかと聞くのも失礼だろうと、私は何も言わずに夢に戻る。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加