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そんな毎日が続いた。
歳をとると頻尿になる為、夜のトイレは仕方が無いのだろう。七十歳目前ともなれば調子のいい日の方が少ない。
彼女が夜中にトイレに起き出すようになって十日程立った頃。元同僚達の誘いで酒を飲み眠った私は、彼女がトイレに起きたタイミングで、トイレに行きたくなった。
少し待とうと私は布団の中で尿意を我慢する。
遅い。
彼女が布団を出てから、三十分。
こんなに時間がかかるものなのか、そう思い私は目を擦りながら、布団を抜け出す。そしてトイレをノックする。
返事は無い。
心配に成り、扉を開けた。
そこには、誰も居なかった。家の中は真っ暗で、部屋中を見回るも彼女の姿は何処にもなかった。
玄関にある筈の、百貨店で買った彼女の靴も消えていた。古い時計が二時を告げた。
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