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時刻は十六時過ぎ。もうほとんどの生徒は下校をはじめているだろう。ただ俺は幽霊と教室に残っていた。
「なぁ幽霊さ……」
「カエデ」
「あ、あの……」
「カエデ」
「じゃあ……カエデ」
「うん」
なんなんだ。名前を呼んであげたらめちゃくちゃ笑顔がかえってきたぞ。ってそんなことじゃねぇよ、俺!
「なんでこんなとこにいんの?」
「ここに通ってるから」
「……。」
まぁ確かに授業中もずっと後ろにいたわけなんだが、なんで幽霊が受けてんのよ授業。それに見てて一つわかったことがある。
こいつ、勉強ができる!
「そこじゃないでしょ!!!」
「うわ!」
その時教室のドアがバーン!と開きある女子が入ってきた。いや、破壊しそうな勢いだった。
「だ、誰だよ?」
と聞いた俺だったがその顔には見覚えがあった。う~ん誰だったかなぁ~。
「ちょっとクラスメートの事も分からないの?」
その女子は少し怒ったかのように言ってきた。クラスメート?う~ん。
「相田?」
「違う」
「戦場ヶ原?」
「ホチキスなんか持ってないわよ!」
「誰だよ、じゃあ」
俺はほんとにわからなかったので聞いてみた。まぁ途中から当てる気などなく遊んでたんだけど。
「八千代 舞姫よ。朝だって目があったじゃない」
あーあいつか。みんなの視線が刺さってたときめっちゃ真剣に見てた奴。あれ、でもなんでこんなとこいんの?
「それは……」
「舞ちゃんまだ帰ってなかったんだね」
返事に困っていた八千代の横からカエデが言った。明らかに八千代にむかって、しかも舞ちゃんって。
「私も見えるのよ。あんたも見えるんでしょ?」
「まじかよ」
そーいえばさっきカエデと話してる時に突入してきたんだったな。てか、さっき俺の心の声にツッコミいれてなかったか? 怖ぇ。
「でも、舞ちゃんて」
そうこいつはさっきカエデに舞ちゃんと呼ばれていた。まるで友達みたいじゃないか。
「『私達友達なの』」
と俺の言いたい事が二人とも分かったのか言ってきた。
なんでもこの後、話を聞いたところ去年入学して少したったころ見えてしまったんだそう。そして話してみたら楽しくて友達になったそうだ。なんてコミュ力。でもなく普段の八千代はそんなに誰かと関わるなんてことがあまりないように見える。それだけカエデと話が合ったんだろうか。
そして俺達はもう暗くなるってことで今日はとりあえず帰ることになった。俺は玄関に向かいながらカエデに聞きたいことがあった。
「なぁカエデ」
「なに?」
「お前、どこに帰るの?」
そう、こいつはこれからどうするんだろうか。もう学校は終わったわけだし。
「分からないけど、多分今日は学校に残るかな」
「そ、そうなんだ」
とここで八千代が俺に耳打ちしてきた。
「最近この辺で幽霊がでたとか学校の明かりがついていたとかいろいろ噂があったじゃない?」
「ああ、確かにあったな」
そんな噂が出始めたのはたしか去年だったな。でも何で急にそんな話すんだよと俺は八千代に先を促した。
「それ、だいたいカエデだから」
「……。」
何も言えなかった。隣で可愛くどこかぼーっとしてるこいつの仕業だったとは。それがこいつの夜の仕事なのだろうか。まぁ幽霊だしな。
「まぁ、わざとじゃなくてただ歩いているところを見られたとか、夜学校暗くて怖くて電気をつけた所を見られたとかそんな感じらしいけど」
「幽霊だろおぉぉぉ!!!??」
俺は叫ばずにいられなかった。
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