花 の 雨

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「おはよう」 澄んだ声に振り返ると 大阪支社設計部所属の 坂井なぎさがいた。 「君も泊まって」 秀明は途中で苦笑した。 「ああ、湯田の部屋に  泊まっていたんだ」 「どうせ仕事でここだろ?  大阪市内のなぎさの  マンションよりお互いに  便利だからさ」 照れもなく男の蓮司が 簡単に言うのは理解出来るが 「そうなの、フフ」 サラリと頷くなぎさの様子には 秀明の方がやや、赤面する。 四つ程年下のなぎさと 蓮司の関係は、社内でも 知らない者はいない、  『束縛し合わない仲』 だと。 三年にもなる間柄であっても それを意識させないのは (もう二年もせずして  大規模プロジェクトも  任されるだろう) 秀明が常々感服する なぎさの設計士としての技量。 恋人の蓮司も 「アイツは、俺より図面と  添い寝が好きだろうよ、ハハハ」   評価している。
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