0人が本棚に入れています
本棚に追加
すみません
すみませーん!お姉さん綺麗ですねえ。モデルとか興味ない?
振り向くと金髪のチャラい男。
このにやついた男に付いていったら、、
ーーー裏通りの古い雑居ビル。
中に入ると、ヤバそうなおっさん達数名に囲まれる。
なんだかんだでそのまま服を脱がされビデオ撮影。
事が終わると裸の私にさっき無理やり書かされた契約書をちらつかせながら 警察に行ったらどうなるか分かるよね?
男達は鋭い視線で私を圧倒した。
一瞬で最悪の未来を容易に想像できた私は金髪男を無視して足早に立ち去った。
すみません。
優しい声に振り向くと声と同じく優しい笑顔のご婦人。
突然ごめんなさいね。 私、実は霊感があって。あなたがあまりにも邪悪な霊に憑かれているから心配で声をお掛けしたのよ。決して怪しい者じゃないわ。よかったらあなたを助けるお手伝いをしたいの。今お時間ある?
この優しそうなマダムに付いていったら、、
ーーー 大きく立派な建物の入り口には「愛と地球を守るラブラブ教」と巨大な大理石に彫られていた。
怪しすぎる宗教名だが、建物内にはマダム同様、優しい笑顔の見た目普通の老若男女がたくさんいた。
あなたは優しすぎるから霊に憑かれやすいの。生霊ね。あなたの周囲の人間よ。この生霊を払うにはまずあなたの中にある「欲」を払拭しないと。大丈夫。私達ラブラブ教があなたを守ってあげるわ。もうあなたも仲間ですもの。 心配しないで、ラブラブ教にはお布施なんてないから。ただ、あなたを清め守るために少し実費がかかるのよ。それだけよ。うふふ。
マダムの目がキラリと光った。
これまた容易に泥沼に落ちていく人生が想像できた私は、中年女を無視して足早に立ち去った。
人生が1日で最高に輝かしいものになる事はまずないが、逆に最低最悪のどん底に落ちる事は本当に簡単に出来る。
都会の繁華街をうろつくだけだ。 SNSより落ちるのは早い。ハイエナに出会い、付いていったらはい、おしまい。
相手からニコニコしながらやってくる。
人生は怖い。
気を付けて生きなければ。
私が歩行者天国の人混みを歩き続けていると、スマホ片手にペコペコ頭を下げている男が目に入った。 どこにでもいそうな若いスーツ姿の男。 小さく何度も頭を下げている。
「打ち合わせの時間を間違えた?あーこれから出発ですか。はい、大丈夫です。はい、はい。 私が時間の再確認をせずに申し訳御座いませんでした。いえいえ、1時間後?もちろん大丈夫です。はい、失礼致します。」
自分に非はないのに、大人は大変だ。私はその見知らぬ男に同情した。男は電話を切るとふう、とため息をついて目の前にあったカフェへ向かった。私はよし、と心で呟くと彼に歩み寄った。
「あのお、すみませ~ん。」
とびっきりの笑顔と上目遣いでスーツ男をロックオン。
カモゲット♡
スーツ男の空いたこの1時間は、こいつの人生真っ逆さま劇場の始まりだ。 女は慣れた様子で更に声のトーンを高くした。
最初のコメントを投稿しよう!