3 悪いやつら

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「いいわよ。ジョーは待機で」 「いや、行く」 「珍しいわね」 そう言って彼女は車のエンジンを掛けた。 「ああ。お前が何をするのか見たいのだ」 「どうぞ、ご勝手に」 真凛は魔女だが、飛行能力はまだ備わっていないので、普通に運転して行った。 しかし。 コウモリとゴーストのガイドで及川達の動きは把握していた。 「小樽築港。縛られてそこにいるわ」 「もっとスピード落とせ。ゾンビの俺を殺す気か」 「死ぬつもりないくせに。うるさい」 こうして真凛達は夜の海にやって来た。 「あの車か。及川さんは、拳銃を奪われトランクの中ね」 「どうするつもりだ」 「行って奴らを」 「まあ待て」 すると彼女の声を遮ってジョーが車に近づいた。 そして運転席の窓をノックした。 「……こんばんは。素敵な夜ですね」 「うわ?びっくりさせやがって。何だ!このやろう」 男がジョーの服の襟を掴むと、ジョーのクビが有り得ない角度で自分に曲がってきた。 「う、うわあーーー」 「どうした?、ああああ?」 今度は助手席の窓にビッシリに蛾がくっ付いていた。 「ぎゃあああ」 「うわああ?入ってきた!」 運転席から入ってきた蛾は、男達の顔面を襲ってきた。 「う!口に入る」 「ぐええ???」 余りの恐怖に2人は失神してしまった。 「どうだ!」 「ゾンビの俺よりもこっちの方が恐怖とは」 そして真凛がトランクを開けると、そこでは目隠しされた及川と今井がぐったりとしていた。 「生きているな」 「自分と一緒にしないで」 そして真凛は悪いやつをジョーに見張ってもらっている間、及川にそっと触れた。 ……大丈夫よ、さあ、起きて…… 真凛が優しく頬にキスをすると目隠しされたままの及川はピクと動き出した。 これを見届けた真凛はジョーと一緒にこの場を後にした。 そして数日後。 ススキノにある真凛の会社に及川と今井がやってきた。 「この前の貸金庫ありがとうな。確かにあそこに証拠があったよ」 「良かったですね」 「それとですね。真凛さんはご存知かもしれませんが。先日僕たちは麻薬取引の現場を押さえて犯人を逮捕しました」 澄まし顔で揺さぶりをかけてきた今井に真凛も澄まし顔をした。 「初耳ですよ。良かったですね」 「あのな。あのタレ込み電話ってお前じゃないのか」 「何のこと?」 「あのですね。真凛さん」 「はいはい。みなさん。お疲れ様です〜」 するとここに可憐がお茶を運んできた。 「それと、お手柄おめでとうございます。これどうぞ、私が焼いたクッキーです」 「可憐ちゃんはいいなーー誰かと違って……う?これは」 「え?ダメでしたか」 「……いや、お、美味しいよ」 作り笑いの彼を見て、今井はすっとメガネを押し上げた。 「よし。及川。俺の分もやる」 「私のもどうぞ。あ?ちょっと失礼」 彼女は笑いを堪えながら、そっと部屋を出て仕事の電話に出た。 そんな彼女は地下室で眠っている彼のために静かに静かに歩くのだった。 つづく
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