236人が本棚に入れています
本棚に追加
4 ブルームーン
北の街には不思議な店がある。
何が不思議かというとそれはいつも霧の中にあって行こうとしても辿りつけないからだ。
誰かが片目をつぶれば見えるとか、三度回れば良いとか、松明を振れば良いと言うが、誰も成功した事はない。
そんな店には仲良しの魔女のきょうだいが住んでいて、持ち主がいなくなった可哀想な品を格安で売っているという。
是非一度足をお運びいただきたいが、この店、実はゴーストがいると言うのでくれぐれも御注意を。
今宵、青い月夜に、君を待つ。
「はい、今夜の戦利品」
「まあまあだね」
姉の真凛がどさっと置いたダンボールの中を覗きこんだ妹の可憐は、姉の食事の支度をしようと立ち上がろうとしたが、姉はそれを制した。
「いいのよ。自分でやるから」
「そう?じゃあ、私は店にいるね」
2人の姉妹が住むビルの一階はリサイクルショップ『ブルームーン』となっており、これは利用可能な遺品を販売してる店だった。
もちろん遺品となると売れないので、表向きは引っ越し時の不要品と扱っていた。
姉がゴーストを従えた遺品整理品の多くは廃棄であるが、手ぶらで部屋から出るわけにはいかないので、こうして使える品だけ手動で頂戴していたのだった。
そんなありがたい品は、妹の手で綺麗に再生されこの店で販売されていた。
「いらっしゃいませ!」
「可憐ちゃん。トースターないかな。パンを焼くんだ」
近所でお年寄りの面倒を見る会社の社員の中村はそう言ってサイクル品を見ていた。
「訪問先のお爺さんが欲しいってさ」
「それは扉が開く物ですか?それとも飛び出すやつですか」
「飛び出すやつなんかあるの?」
「ありますよ」
そういって可憐は二種類のトースターを彼に見せた。彼は扉の付いたものにすると言った。
「でも、その飛び出すやつ、気になるな」
「……今度お買い上げくださいね!ありがとうございます〜」
こうして売った可憐に、店番のゴーストがささやいた。
「売りつければいいのに」
「それはダメなのよ?あ、いらっしゃいませ」
「すいません。トースターありませんか?あの、飛び出すやつを探しているんです」
「ございますよ!」
姉の真凛のホウキを眼を盗んで勝手に触り魔女の能力が付いた可憐は、真凛までの力は無いが、元々勘が鋭いのが更に冴え、この程度の予知ができるようになっていた。
この他には植物を少しだけ操る事ができ、蕾の花を咲かせたり、木の葉を落とさせたりすることはできた。
ゴーストに関しては、真凛ほどはっきり見えないが、感じる事が出来ていた。
そんな可憐は店仕舞いをし、2階の事務所に顔を出した。
「ジョー。寒く無いの?そんな格好で」
「真凛。ゾンビが寒さを感じる訳がないでしょう」
「いや。見た目が寒そうだから」
「ありがとう、可憐。今、体を直していたんだ」
最初のコメントを投稿しよう!