サクラとマツ

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夕暮れの河川敷。遠くに3両編成の電車が走る音を聞く、帰り道。 時刻はまだ5時なのに、仰げば空は薄暗く、灰色の雲が形を変えながら西に押し流されていた。 人通りは多く、近くの高校から下校する学生たちが自転車で隣りをすり抜けていく。あっという間に小さくなっていく学生服。青春の短さを覚え、心細くなった。 帰ったらカリフラワーとジャガイモのシチューだ。せめてそれを心の支えにとぼとぼ歩いていると、向こう側から右手を大きく振りながら走ってくる男子に気がついた。 さーくーらーぁ! 「……(まっ)ちゃん」 柔らかな茶髪を後方になびかせ、スピードをぐんぐん加速させて風のように走ってくる。 そして私の目の前で急ブレーキをかけた。 家からここまで3km、ずっと走ってきたのかもしれない。松ちゃんにしてみればなんてことない距離だ。それでも肩を大きく上下させていた。 「桜!」 185㎝ある松ちゃんは、157㎝の私の両方をつかみ、覆いかぶさるようにして言った。 「俺! 短期留学決まった!」
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