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思い切り叫ぶと、喉がヒリヒリ痛んだ。
「言いたいこと、それだけ?」
私が黙ると、松ちゃんの意外にも落ち着いた声が降りてきた。
なぜか肩で息をしていた私は、何か言いたいのに言葉が出てこず、返事できなかった。
俯いたままの私を、再び松ちゃんの両腕が包んだ。
「桜の病気が治るまで待ってるから」
低く優しい声。
年下のくせに。懐いたワンコみたいなくせに。松ちゃんのくせに。
子供を宥めるような穏やかな言い方がずるい。
そのせいで石みたいだった心がまるでアイスクリームみたいに溶けて。
真ん中にあった不安が露わになる。
「……治らない、かも」
「治る」
松ちゃんの強い声が、私の弱々しい言葉を即座に打ち消した。
「俺がそばにいるんだから」
「そんなの、全然医学的根拠がない」
「そんなことねーよ。笑ってると免疫力上がるんだって」
「アメリカ……」
「だから、桜が元気になってから行くって」
言い出したら、聞かないんだから。
今度こそ熱を帯びた涙が、我慢してたぶんまで溢れた。
松ちゃんがそばにいる。
それだけで、勇気が100倍になった。
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