一欠片

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一欠片

「はぁ……」  僕は机いっぱいに散らばっている、様々な冊子を眺める。何度目か分からない溜息を再度つき、適当な冊子を手に取りパラパラとめくる。 「本当、どうしようかな……」  机の上にある大量の冊子の正体は、大学のパンフレットだ。これは親が僕の知らない間に取っていたものらしく、先程学校から帰った際に手渡された。  パンフレットに乗っている人達はキラキラと輝く笑顔を浮かべていて、その隣には将来の夢についてだとかその大学のいい所だとかが書かれている。  僕にはその笑顔が眩しくて、見ているだけで気分が落ち込むようだった。進路を決めなきゃいけないのは十分すぎるほどに分かっている。だが、どうしてもやりたいことやなりたいものが見つからないのだ。そんな中でどうやって決めればいいのだろうか。 「あーあ……散歩にでも行こうかな」  部屋に居ても気分が落ち込むだけなので、僕は気分転換に近所をふらつくことにした。窓を見ると日が落ちかけている。今はまだ暖かいが、夜は冷えるかもしれない。そう考えて、クローゼットから上着を持って母親に気づかれないようにそっと玄関の扉を開けた。 何処でもいいから、どこか遠くへ行きたかったのだ。
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