二欠片

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二欠片

 生暖かい風とひんやりした風が混じって吹く変な陽気の中、僕は行く宛てもなくさまよっていた。  最近、自分自身について考えなくてはならないことが増える中、答えはまるで見つからなかった。やりたいこと、できること、自分らしさ……どれについてもはっきりと答えられる自信はない。 「答えられないのは今に始まったことじゃないけど……」  昔から僕は自分について答えられないことが多かった。小学生時代、何気なく先生が聞いたであろう『将来の夢』に僕は答えられなかった。まだ低学年の頃だった為、周りの子は子供らしくヒーローになりたいとか、サッカー選手になりたいとか言っていた。  ある時、なにかの授業で自分の長所や良さを互いに言い合うというものがあった。その時も何一つ言うことが出来なかった。相手の子は躊躇うことなくすらすら答えていた。どうしてそれが言えるのか僕には不思議でならなかった。 「……今聞かれても答えられないだろうなぁ」  やっぱり僕は何一つ変わっていない。どうしても浮かばない。頭の中で同じ問いがぐるぐると渦巻いている。  ふらふら、ふらふらと思考も僕も、さ迷い、どこにも辿り着かない。  ふと辺りを見渡すと僕は身の回りの異変に気が付いた。
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