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盛山は風呂で声を押し殺しながら、細川の身体の一部が入ってくるであろう箇所を広げようとする。
細川と同じ布団に入るようになってから、こうして一人で試しているけれど、二本目の指が入らない。何も入れられなかった最初からしたら大きな進歩だが、このままでは行為を完遂するのはどう考えても無理だ。
とはいえ、ここからどうやって広げたら良いのか分からない。恐怖で身体が竦んで、息が上がる。
本当に何も知らない頃は、ただ期待を募らせていた。痛みと恐怖を知ってしまった今、もうその頃には戻れない。
一人だから上手くいかないのだろうか。細川と一緒にやってみたら、案外すんなり入ってしまうのだろうか。
結局どうにもならないまま、盛山は風呂から出た。髪を乾かしてリビングに戻ると、布団の上で細川が寝転がっていた。
「結構長かったな」
「……そうだね」
曖昧な相槌を打つことしか出来なかった盛山は、恐る恐る布団の隅に座る。細川は盛山の頬に手を当て、額と額をくっつけてきた。
「大丈夫か? 不安なら無理しなくて良いから」
「……大丈夫」
詰めた息を吐き出すと、思考の風通しも良くなった気がした。目の前の細川に焦点を合わせる。細川は心配そうな顔をしていたけれど、盛山が軽くキスしたのを合図に、二人で布団に倒れ込んだ。
盛山に覆い被さる細川は、恐怖のせいで知らない人に見える。顔も身体も細川なのに。
震える手で細川の背を掻き抱く。細川も盛山を抱きしめ返してくれた。細川の身体が熱い。……盛山が冷えているのかもしれない。
「好きだ、健。大丈夫」
質量を持った細川の言葉が、確かに盛山の心に届く。その言葉だけで頑張れる気がした。
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