第2話

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 中学に入った時に、ある少年を兄が拾って帰ってきた。  見た目はいいけれど、鋭い目つき。何やら訳あり、なのは分かる。ここに来る、拾われた者は大抵(たいてい)は訳あり。  少年は、山本健次郎と聞いた。何となく、拾われたからと兄の傍にいるようになったが……。  「お嬢様? どこへ?」  「関係ある?」  「若に言われたので」  「ふぅん……兄貴が言えば、アンタ、何でもやるの?」  「はい」  「じゃあ、兄貴が私を殺せって言ったら?」  「殺します」  「ははっ!!」   あの日以来、菜月お嬢様に何かと突っ掛かれる。どんどん痛いところを突く。  自分が見ないようにしてきた現実も。けれど、過去は聴かない。  「お嬢様は、俺の……過去は聴かないんですか?」  「聴いてどうするの?」  「えっ?!」  「聴いてどうなるの? って言ったの」  「いや……どうにも……」  「ならないよね? だから、聴かない」  そのときの、彼女の瞳。真っ直ぐで、俺から目を離さないで言った。あの日、俺に「どうにもならない。だから、聴かない」と言った彼女。
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