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コンシェルジュと目が合い、笑顔で会釈される。
私も慌てて会釈をし、マンションを後にした。
エントランスから外へ出る。
見上げると、電車の中から見えるマンションだと気づく。
でも、最早そんな事はどうだっていい。
何故こんな事になっているのか…。
歩きながら冷静に考えてみる。
昨夜は部署のお疲れ様会だった。
飲めない私は、烏龍茶やカルピスをチビチビ飲んでいた。
そこにカルピス酎ハイを間違えて飲んだ事、その後気持ち悪くてトイレへ駆け込んだ。
覚えてる。
その後…。
すーっと息を深く吸う。
『川瀬と白木部長は同じ方面ですよね?彼女を送って頂けますか?』
同僚の澤井恵梨香の声がした。
『分かった。川瀬帰るぞ。』
そう言って部長が私を抱えてタクシーに乗り込んだんだ。
私、きっとそのまま寝てしまって部長は仕方なく部屋に連れ帰ったんだろう…。
スマホを再度見ると恵梨香からトークアプリにメールが届いていた。
《葵、無事に帰れた?》
……恵梨香、無事に帰れてない。
いや、何も無かったのだから無事なのか…。
川瀬 葵、33年間の人生で昨夜人生の汚点を作ってしまった…。
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