side. Azur

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 まぁな、としたり顔の彼をよそに、私は視界一面に広がるアサガオ達を呆然と眺める。  青と白、時々しょぼくれた赤色のコントラストは見ているだけでも、心が落ち着いてくる。だけど冷静さを取り戻すと同時に、どこか暗くて重い不安がのし掛かってくる。立派に色鮮やかに咲けた花と、何の特徴もない地味な花。 「でも白いアサガオって、なんか地味だよね。誰か買うのかな?」  彼の言葉に期待を込めて、それとなく聞いてみる。 「そうだよな。アサガオっていったら、やっぱり青だし…俺は買わないかな。」  押し潰されそうな気持ちを隠す様に彼の服の袖を掴む。行こう、と呟くと彼もうん、と呟いてその場を後にする。  後ろ髪を引かれた気がしてアサガオ達へ振り返ると、まるで目がついているかの様に花達が私の方へ向いていた。花達は何か訴えかけるかの様に遠ざかっていく私を凝視する。 『貴方は、このままでいいの?』と…
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