ある日常

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 好きな人が男だということを佐木(さき)に話してからというもの、やたらと店へ連れて行けという。  郷田一太(ごうだいった)の相手である沖駿也(おきしゅんや)がどんな人物なのか気になっているのだろう。ゆえに店に連れて行きたくなかったのだが、流石、同じ刑事だけある。カウンター席にその姿をみつけたときには脱力した。 「よう、郷田」  満面な笑みを浮かべ手を上げる。やたらと急いで帰ると思ったが、このためだったとは。 「郷田君の先輩なんだってね」  河北が隣でビールを飲んでいる。 「こんなイケメンの刑事さんもいるんだね」  と常連の一人がいう。  はじめてきたというのに佐木は店に溶け込んでいた。郷田が受け入れられるのには時間がかかったというのに。  郷田はいつもの席に腰を下ろす。すると沖がいらっしゃいとお茶とおしぼりを置いた。  今日はカレーライスだ。何が食べたいと聞かれて郷田がリクエストをした。  季節の野菜を使い作ったカレーなのだが、冬は豚肉、大根、蓮根、里芋が入っている。  初めて食べたときは驚いたが美味くて、楽しみなメニューの一つとなった。 「今、用意するから。佐木さんと河北さんもご飯にしますか?」 「はい。お願いします」 「よろしくね」  食事を用意する間、佐木が沖に話しかける。
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