ある日常 2

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 スマートフォンにセットしたアラームが鳴る。朝五時、そろそろ起きて準備を始めなければならない。 「おはようございます」 「おはよう、一太君」  一度のアラームで二人とも目が覚める。ただ、この温かさから抜け出したくないという気持ちが起きるのを邪魔する。 「起きなきゃね。ばぁちゃんが来るし」  いまだ寝ていたら怒られてしまう。しぶしぶ布団から抜け出ると、郷田が布団をたたんで押し入れにしまった。  ご飯は店の炊飯器で炊く。ハンバーグは焼き色をつけてからオーブンで焼く。エビフライはトメが作ってくれるのでエビの下処理のみしておく。 「駿也」 「あ、ばぁちゃん」  玄関の扉が開きトメが中へと声をかける。そこには義理姉と共に鍋が二つ置かれている。 「ばぁちゃんと義理姉さん、おはよう」 「おはよう。それじゃ帰るね」 「うん」  鍋を持ち台所へと向かう。テーブルに置き蓋を開けるといいにおいがしてくる。 「ばぁちゃんのきんぴらと黒豆」 「美味そうですね」  つまみ食いをしたいところだが、トメに蓋をしめられてしまう。 「ほら、駿也、手ぇ動かしな。一太は魚を焼く」  トメは沖と郷田が恋人同士だということを知っている。家に来た時に話をしたからだ。  あの時のことを思い出すと今でも顔がにやけてしまう。
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