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 女性が赤子を抱いている。  その瞬間、夢だと分かった。なぜならその光景は、彼には縁がなかったものだからだ。  彼は女性に寄り添うと赤子を見た。  赤子が手を伸ばしてくる。彼がその手に触れると小さな手で指を掴まれた。 「この子の名前、どうしましょうか?」  幸せで堪らないという表情をする彼女に、彼の頬も緩む。そしてどんな名前が似合うだろうかと赤子を見つめた。  視線に気付いた赤子が彼を見て、屈託なく笑う。  その瞬間、周りが明るくなったように感じた。 「ーーあかり」 「えっ?」  女性が驚いた様子で彼を見上げる。 「この子は周りを灯すように笑う。だから、灯すという漢字を使って(あかり)はどうだ?」  彼の提案に彼女は驚いたように目を瞬かせる。しかしすぐに微笑んだ。 「灯……良い名前ね。私もそれが良いと思う」  女性は頷くと赤子の頬をそっと撫でる。 「君の名前は灯だよ。元気に育ってね」  ーーそこで、彼の夢は醒めた。  目を覚ますと、辺りはまだ真っ暗だった。 「そっか、あの写真の子は……」  誰もいない真っ暗な自室で、木島は一人呟いた。
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