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不公平な世界で感じる温もり
『さようなら』
『ええ、さようなら…』
自分の腕の中で感じるのは、この世で最も愛しい女性の温もり。しかし自分の愛しい女性は、血の繋がった実の妹。
『じゃあ』
『ええ、じゃあ…』
別れの言葉を告げてもなお、この世で最も愛しい女性を抱き締める事を止める事は出来ない。この世は本当に不公平だと心の底から強烈に感じる。同性の恋愛は認められるようになっても、世界で最も愛する女性が血の繋がった妹の場合は、この不公平な世界では二人の関係が認められる事は決してないのだから。
『…もしも来世があるのなら』
自分が辛うじて絞り出した言葉に、腕の中の愛しい女性は頷いて。
『ええ、もし来世があるのなら、血の繋がらない他人として生まれて来て…』
それ以上はお互いに何も言わずに、最後となる温もりを夕闇に包まれる不公平な世界で感じ続けていた。
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