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足が立たないのでグレンに背負ってもらい、街の宿屋を探す。祭りの当日だからどこも予約で一杯らしく、空いているのは「ジェシーの館」という娼館の隣にある連れ込み宿だけだった。自分たちの目的はそれなのに、歓楽を目的にした場所にいると、なぜか悪いことをしている気になってしまう。宿屋の入口でグレンが、背負ったシリルを振り返った。
「ここでいいか?」
「いいよ。さっきのお姐さんたちに見付からないうちに入ろう、グレン」
「いらっしゃい。ご休憩かね、それともお泊まりで?」
「泊まりだ。明日の朝食も頼む」
無愛想な客室係に案内された部屋には、二人寝転んでも平気そうな寝台があった。
だが真紅の薔薇模様の上掛けがかかっていて、壁紙も女性が好みそうなピンク色の甘ったるい内装だ。シリルは出鼻をくじかれたような気持ちになった。
「女の人向けの部屋だね……」
「仕方ない。ここしか空いていないからな」
唯一実用的な金属製のランプに火を点けるグレンは、いつも通り落ち着いている。大きな背中を見ていると、この人が好きだという感情がじわじわと膨れあがっていく。
(今日もグレンにたくさん助けてもらっちゃった。ここまで背負ってくれたし、『悩み聞きます』の情報斡旋屋の似顔絵を描いてくれたし。無口なところも、聞いたら答えてくれるって言ってくれた)
そういえば、情報屋と知らずに相談したとき、首筋を噛んでくれないと不満を洩らしたのを思い出した。
「シリル。灯りだが、あまり明るくなくていいか?」と振り向いたグレンの胴に手を廻す。
「グレン、お願いがあるんだ」
「なんだ?」
「……今日ここで、僕のうなじを噛んでくれる? 痛くてもいい、証が欲しいんだ」
「だが、お前は今発情期じゃないだろう。ちゃんとした番の契約にはならないが」
言い淀むグレンの唇を、同じものでふさぐ。チュッとリップ音を響かせ、雪豹の男を見上げた。
「それでもいい。僕の体に、グレンを刻んでほしいから」
「そうか。……ありがとう、シリル」
濃い口付けを返されたかと思うと、着ていた服を剥がされる。寝台に連れて行かれ、ゆっくりとのし掛かられた。首輪の鍵を、カチャリと外される。
「お前は一生俺が守る。もうつらい思いをさせたりしない」
グレンも自らのシャツを荒々しくはだけてゆく。あっという間に胸に吸いつかれた。
「あ。グレン……っ」
すでに期待で尖っている先端を啄まれ、甘い痺れに酔いそうになる。時折軽く噛まれるたびに、ビクンと体が跳ねてしまう。
「感じているのか、シリル」
シリルの反応を見たグレンが嬉しそうな声を出す。もっと喜ばせてやろうと思ってか反対側の乳首も摘ままれ、恥ずかしさにいたたまれなくなって顔を隠した。
「隠すな。お前の悦ぶ顔が見えなくなる」
手を払われ、唇をふさがれながらも両手で乳首を捏ねられて、一体これはなんの拷問だろうかと思えてしまう。
「結婚するなら、俺に全部見せてくれ。恥ずかしがっていては分からない。昼間お前も言っていただろう」
(たしかに言ったけど……っ)
考えていることと褥のことは違うのではないかと思っていると、グレンは胸への刺激を強めた。サリサリとしたざらつきのある舌に舐められると頭に血が上ってしまい、しっかりものが考えられなくなる。
「ふぁ。あ……っ」
耐えきれず、シリルはグレンの頭を掻き抱いた。フワフワとした獣毛が心地いい。後頭部の毛並みを愛おしむように撫でると、グレンはグルル……と満足そうに喉を鳴らしていた。
「次はどこがいいんだ?」
「ここ。ここも……っ」
白銀の獣毛に覆われた掌を股間に導く。目を合わせられないほどの羞恥を覚えたが仕方ない。夫夫というものには、たとえ閨事でも隠しごとはしてはいけないらしいから。
「シリルは素直だな」
クッと喉元で笑うグレンの手が、彼とシリルのものを合わせる。ふれ合わせられて分かったが、グレンの性器はこれ以上ないほど硬く反り返っていて、まだ半勃ちの己のものが恥ずかしくなるほど立派だった。そんなシリルの気持ちを読み取ったのか、グレンが「お前だって、擦ればすぐに硬くなる」と囁く。そうしてまた胸をいじられながら力強く掌で愛撫されると、意識が飛んでしまいそうになった。
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