6.夏至祭の夜

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(グレンのあそこの根元……。ノットっていうんだっけ)  性器の根元にある瘤状の固まりが睾丸にあたるたび、子作りするときにはここに子種を蓄え長い射精をするのだと意識してしまう。シリルのようなオメガにはない、アルファだけの器官だ。おまけに、グレンは猫科の身体的特徴を持っているから、性交時にはシリルの腸壁に棘状の針を刺して抜けないようにする。 (今度僕が発情した時、きっとグレンの子を(はら)むんだろうな)  性器を擦る手が早くなってゆく。恐れにも似た期待で股間が反応し、シリルは最初の高みを迎えた。 「はぁ、は……っ」  すっかり息が上がってしまい、仰向けに寝転がると、グレンはなんでもないことのように足のあいだに顔を埋めた。 「え!? やだっ」 「やだじゃない。次はここだろう」 「でも、今までこんなことしたことないのに」 「言っただろう、お前の悦ぶ顔が見たいと。オメガの男なら、だれでもここで気持ちよくなれるはずだ」  閉じようとする脚を押さえつけられ、抵抗が不可能だと悟った。シリルの直腸からは、子宮より分泌される液体が流れ出ているのだ。シリルの足を開かせたグレンが、ペチャペチャと音を立ててそれを丹念に舐め取ってゆく。  ずくん、と体の奥が軋んだ。内腿に分泌液がトロトロと滴ってゆく。グレンの毛並みが腿にふれ、くすぐったいけれどゾクゾクした。 「あ……」  腿に食い込んだグレンの爪にすら感じて、鳥肌が立つ。グレンを抱きしめたいのに彼は遙か下にいて、もどかしい。  ふいに充分に潤った直腸内に、指を差し入れられた。長い指をあっさりと受け入れる自分が淫らだと言われているようで、火が点いたように顔が熱くなった。  そんなことに頓着しない男の指がコリコリ、と前立腺の裏を刺激し、ふたたび胸を啄むように舐めはじめる。長い腕を伸ばし、胸と後孔を同時に攻めてくる。胸からは甘い疼痛を、後孔からはやめて欲しいような、もっとして欲しいような快楽に苛まれる。 「あぁ、グレン。グレン……っ」  前立腺を刺激され、胸の先端を吸い上げられるたびに、どこか遠いところへ連れて行かれるような錯覚を覚えた。たまらず首に腕を廻し、彼を抱き寄せる。温かな毛皮のぬくもりが心地いい。体を密着させていると、グレンの屹立が太腿にあたった。それは体内に受け入れるには怖ろしいくらいに大きくなっていた。 (さっきから僕ばかり気持ちよくなってる。グレンだって挿入したいだろうに) 「グレン、もう我慢しないで。僕の中に挿入(はい)って」 「シリル。だけどお前はまだ……」 「いいんだ、もう充分気持ちよかったから。挿入(いれ)て、うなじを噛んで。……来て」 「分かった。噛むには後背位になってもらわないといけない」 「うん」  尻を突き出すようにして四つ這いになると同時に、分厚い胸板が背中に押しつけられた。 (グレンの上半身、背中で感じるとまた違う……)  考えているあいだに乳首を背後からキュウッと摘ままれ、直腸の奥に響いてしまう。ドッと体液が後孔から漏れた。 「あ、またなにか出た……」 「今度は舐めてやれない。お前の中に挿入(はい)る貴重な潤滑油だからな」  すっかり猛りきったものを後ろに()てられた。今からあの大きなものを受け入れるのだ。直腸奥から出たぬめりを借り、グレンが体内に挿入ってくる。 「うぁ……っ」  グレンはもともと大きい成りだが、膨張した性器に体を裂かれるような錯覚を初めて感じた。体の大きな番を持つとこんな苦労もあるんだと、文字通り痛感した。 「痛いのか、シリル」 「少しだけだよ。慣れてきたらきっと大丈夫だから、動いてっ」 「シリル……」  いたわるように耳元に口付けが振ってきて、この人は相変わらずなんて優しいんだろうと涙ぐみそうになる。続いて腰を揺さ振られ、はじめ痛かった場所が違和感に変わってゆく。腸内でグレンの性器が擦れるたびに、その違和感が悦楽というものに変化してゆくのを体で覚えた。知らぬうちに、グレンの律動に合わせ腰を揺らす自分がいる。 「気持ちいい。いいよ、グレンっ」 「愛している、シリル。俺は生涯かけてお前を守る」  その言葉のあと、プチリとうなじの皮膚が破れる音がした。
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