第1話 下敷きと感触

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第1話 下敷きと感触

 夏休みも近づいてきたこの時期夏休みに浮かれている生徒たちが溢れるなか俺こと六条(ろくじょう)蓮樹(はすき)は、いつものように休み時間を寝て過ごしていた。  そこに、此方に近付いてくる足音が聞こえてきた。  「おーい、蓮樹。は・す・き!起きろー!」  女子生徒の声だ。その女子生徒の声は、とても澄んでいて綺麗で、他の男子ならどこか心地よさを感じる声でそのまま眠りについていることであろうが、俺はそうはいかない。  なぜなら、彼女がそんな声とは裏腹な奴であることは十数年前から知っていることだ。  だが、さすがに耳元で言われるとむず痒いので俺は、その声にさして重くもない瞼を開け俺の名前を呼ぶ女子生徒の顔を見上げ用件を聞くことにした。  「お?起きたか蓮樹。おはよう!」   「ああ、おはよう夏目(なつめ)。何か用か?」  朝ではないのに元気におはようと俺に笑顔で言って起こしてくれたこの女子生徒は、俺の幼馴染おさななじみの七瀬(ななせ)夏目(なつめ)だ。  「ああ、そうだった!まっちゃんが放課後に教務室に来いだってさ」  「えっ、めんどくさ……何かしたっけか?」  「いや、それを私に聞かれても?まあ、ガンバ!予鈴鳴るから私行くね?」  今日は、機嫌が良いようで鼻歌混じりに夏目は、用件だけ伝えるとさっさと自教室に戻っていった。  何か、いいことでもあったのか。まあ、どうでもいいか。  その後ろ姿を見送ったあと俺は、また瞼を閉じ次の授業を待った。
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